Yeah号をシングルスピード化してみた


風もまだ冷たい2月の終わり。室内でYeah号に乗り、ローラーを回しながら、ふと思い浮かんだことがありました。

この自転車に変速機って必要かなぁ?

実際のところ、固定ローラー台上では負荷はローラー台側で調整しており、ギア位置はほとんど動かすことがありません。

騒音を発生させるだけの変速装置など、もはや無用の長物ではないか? いっそのこと取り去ってしまおう! うん、そうしよう!

……と、見切り発車したのが数か月前のこと。まずはホイールの組み替えに取り掛かりました。



使用するのはシマノ600 HB-6207-R。以前このYeah号で使っていたハブです。

これまでのサンツアーXC Compハブから、このシマノ600ハブに交換する作業自体は、とくに難しいことはありません。

しかしこのボスハブ、本来は多段ギア用のため、そのままシングルフリーを取り付けても、チェーンラインをうまく合わせることができません。



そこでドライブ側の6mm厚スペーサーを左に移し替え、おちょこ量を減らすことにしました。



おちょこ量を大きく変えようとすると、スポークのねじが厳しくなってしまうのですが、ねじの範囲内でどうにかセンターを出すことに成功。

スポーク買い直せよって? まあそれが一番ですよね。(ニップルだけはすべて交換しました)



シングルフリーは安価なDICTA 16T(薄歯)を選択。前52T、後16Tでギア比は3.25。ローラー台ではリア15Tで固定していることが多く、16Tでは少し軽くなってしまいますが、負荷はローラー台のダイヤルで調整できるので、大きな影響はなさそうです。

シングル用のチェーンラインを考慮し、フロントのチェーンリングをインナー側に移動。さらにフリーの下に1mm厚のスペーサーを挟んで、スプロケットの底上げを試みます。

それでもまだチェーンラインを揃えることができず、結果的に5mm以上のズレが生じてしまいました。

まぁ少しぐらいズレたところで、どうということはない。そう思ったのですが……。

正直、シングルスピードのチェーンラインを舐めてました。チェーンをまずRDで吸収する外装変速と違って、チェーンが直接スプロケットに入るシングルギアでは、適正ラインがけっこうシビアなんですね。



ラインがズレた状態ではギア周りがチリチリと音を立て、まるで調整不足の多段変速のように耳障りなので、やむなくタンゲのBB(軸長103mm)を購入。「シングルフリーを買うだけで済みそう」という当初の甘い見通しは、脆くも崩れ去ってしまいました。



軸長を103mmに詰めたことで、クランクとBBのクリアランスが心配でしたが、きわどいところでセーフ。画像のように、右クランク勘合部の入口は右ワン外側面より内側に入っています。内部はおそらくギリギリなんじゃないかと思います。

BBを交換したおかげでチェーンラインはほぼ直線。室内で聞いてもかなり静かな駆動音になりました。


このあたりまでが春先ごろの話です。その後もローラー台の上で順調に稼働し、いよいよ暑くなってきた7月。今回の計画における第2の目的である、期間限定・街乗り仕様への改造に取り掛かりました。

これまで、固定ローラー台ではブレーキ等をすべて取り去って使っていました。もちろん外で走るにはブレーキが必要。レバーはALIVIO BL-M420を再度取り付けるとして、問題はVブレーキ本体です。Deore BR-M530はルートに移植してしまったため、代わりのものを新たに用意しなければいけません。



安価なBR-T4000あたりになるのかなと、ネットで方々を物色していたところ、1,568円(税込)で売られているCapreoを発見。リア用のみ特価ということでしたが、フロント用との違いは付属の小物類だけで、シューを入れ替えれば前後どちらにも使えます。このCapreo BR-F800(リア用)を2つ購入し、Yeah号に取り付けることにしました。



ブレーキアウターは以前のものを再利用。インナーワイヤーは手持ちの中から、このjagwirePVDFケーブルを使います。どのタイミングで買ったのか憶えていないのですが、超特価の処分品か何かだったような気がします。派手な見かけのわりに大したことはない製品で、数年前にディスコンになって以降はテフロンコーティングに取って代わられています。しかもこれ、中身が鉄のワイヤーなんですよね。まあ、引ければ何でもいいやということで。



ハンドルバーはルート(2013)のものを使用。グリップには、これまたルートに使っていたAcorのエルゴ風グリップを取り付けます。



残るはタイヤです。以前履いていたシュワルベマラソンは、全周にわたって深いひび割れが発生。トレッド面などはもはや剥がれそうな勢いで、さすがに寿命が来たようです。

ローラー台で使用中のシティコンタクトをそのまま使えれば良かったのですが、片方のタイヤのビードワイヤーが露出してしまい、現在はローラー台用に後輪1本のみで運用中。 外で走るには新しくタイヤを買うほかありません。

買い物用の自転車として使うのは実質3か月ぐらい。タイヤにはあまりお金をかけたくないのが本音です。そこで、とにかく安いものを、と探し回った結果、1本750円のタイヤを発見しました。



シンコー SR076 20"x1.5です。重さはそれぞれ576gと545g。サイドまでゴムがまわっていることもあり、わりと重めのタイヤですね。標準空気圧は40PSIと低圧タイプ。 センターに深いミゾが1本あります。見た目には転がりそうなパターンですが、さてどうでしょうか。



というわけで、外装7速からシングルスピードへと生まれ変わりました。

うーむ、何というか、より一層地味になったような……。いや、ここはあえて「シンプル」になったと言っておきます。



Yeahのこのモデルは、リアエンドが後ろ開きのホリゾンタルエンドになっており、シングルスピードにはうってつけの形状です。



このリアエンド形状でクイック固定は危ないのでは? と思われるかもしれませんが、後方に脱落することはまずありません。ドライブ側が前に引っ張られてホイールが斜めにズレるという可能性は残るものの、しっかりしたスキュワーを使っていれば大丈夫。その代わりチェーン引きがないので、最初のセンター出しにちょっと手間がかかります。


せっかくいつもの塀の前で撮っているので、ルートも同じように撮影して、画像を重ねるてみることにしました。カメラは三脚に取り付けて位置を固定。レンズの焦点距離も同じです。



まずはフロントのハブ軸を基準に重ねた状態。Yeahは画像から切り抜いたものを重ねています。同じ位置、同じ光源下で撮った画像のためか、実際は別々に撮影したにもかかわらず、 まるで同時に同じ場所にあるかのようですね。

Yeahはホイールベースが長い小径車です。ルートもけっして短くはないのですが、そのルートよりYeahはさらに長くなっています。実際に測ってみたところ1030mm程度ありました。



続いてシートチューブ下端を揃えた画像です。YeahのほうがBBハンガー位置が低いため、サドルの高さも違って見えます。BB軸からサドル上面までの距離はほぼ同じです。シート角はやはりルートのほうが寝ていますね。

リアセンターの長さは大差なし。その一方で、両者のフロントセンターには大きな開きがあることがわかります。Yeahの仮想水平トップチューブ長を測ってみたら、なんと620mm程度もありました。ルートと比べるとだいぶ大きいですね。ただしハンドルポストの角度が違うので、コックピット長は同じような寸法となっています。



最後にルートのフェンダーを取り付けたら、街乗り買い物仕様のYeah号の完成です!

さっそく近場を周ってみると、そのシンプルな見た目もさることながら、走行中に煩わしく感じる部分がなく、すごく気持ちよく走ることができました。いいですね、シングルスピード

3.25というギア比がどうかなと思ったのですが、20インチで平地メインならちょうどよいと感じました。坂のある街ではもう少し軽いほうがいいかもしれません。ちなみに2011年モデルのDAHON Mu UNOは、前53T、後18Tのギア比2.94となっていました。

一方期待のニュータイヤ、シンコーSR076は、転がりそうな見た目とは裏腹に軽快さに乏しく、ぺたーっとした走行感でちょっとガッカリでした。低圧なことに加え、センターの深いミゾのせいで、体重が乗ったときの変形量が大きいのかも?



前輪の接地面ですら、こんな感じで潰れています。

しかしコストパフォーマンスで見れば圧倒的。日常使いの自転車にはぴったりです。使ってみて多少ネガティブな感想を持ったとしても、言葉の最後に「でも750円だし」と付ければ、たいていのことは「まあいいか」となるでしょう。

なお、このタイヤのパターンから、ローラー台用としてもイケるのではないかと期待したのですが、残念ながら騒音が大きく、あまり向いていないようでした。



ちょっとそこら辺まで、という用途に最適な、実に気楽な自転車へと生まれ変わったYeah号。しかしその一方で、重大な欠点にも気づいてしまいました。

それは……カゴがない!

買い物に使う自転車としてこれは致命的でした。カゴを付けるとなると、リクセンカウルのようなものにするにしても、リアorフロントラック+カゴというスタイルにしても、 それなりの費用がかかります。

1年通して街乗りや買い物に使うのならともかく、期間限定仕様の自転車ですし、これ以上の出費は少々ためらわれるところです。装備をルートと共有する形ならアリかとも思いますが……。そのあたりは追々考えることにします。



このダホンの鉄製Re:Barフレーム(YRタイプ)は、その重さや剛性不足という点を割り引いても、個人的にはわりと傑作だと思っています。ガチガチに固いルートとの対比もあるのでしょうが、案外乗り心地がいいんですよね。

おなじY型フレームを採用するかつての名車「DAHON Impulse」が、2015年に一瞬だけ(名ばかりの)復活を果たしました。しかし、あのホムセン自転車ばりの仕様で3万9000円という強気の価格設定が響いたのか、わずか1年で姿を消してしまいました。何かの限定モデルでもいいので、本物のクロモリインパルス、復活しないかな。

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