DAHON Routeのコックピット長とジオメトリー


「小径車って窮屈なんでしょう?」というアナタ! DAHON Routeのトップチューブ長(仮想水平)がどのぐらいの寸法かご存知ですか? なんと……

約570mm(水平換算)

ちょっとビックリしますよね? 本当なんです、このサイズ。実際に測ってみました。



ご覧のとおりです。乗っていると570もあるようには思えないんですけどね。

700Cのクロスバイクと比較してみよう

仮想トップチューブ長で示されてもピンと来ないって? それならば、ルートと他の700C車の画像を重ねて、コックピット長を比べてみるのはどうでしょうか。



比較対象にはGIANT ESCAPE R3を選びました。街中でもよく見かけるポピュラーなクロスバイクです。

比較前の下準備として、双方のホイールベース値を参考に、できるかぎり縮尺を合わせて画像をリサイズしました。

まずは私の身長171cmを基準にして比べてみましょう。SサイズとMサイズの狭間で微妙に迷うところですが、ここではSサイズ465mm(対象身長160~175cm)にします。



ESCAPE R3(S)とDAHON Routeを重ねたのが上の画像です。コクピット長の違いをわかりやすくするために、双方のサドルの先端を揃えてみました。Routeの画像は、私の現在のセッティングに合わせるべく、画像レタッチソフトでサドル高とハンドル高を変更しています。

どうでしょうか。サドルからハンドルまでの距離は双方ほぼ同じですね。

ESCAPE R3の公式スペックによれば、Sサイズフレームの仮想水平トップチューブ長は545mm、ヘッド角72°に、突出し90mmのステムが付いています。(ステムの突出しはヘッド角に対して斜め上方向)

DAHON Routeは、仮想水平トップチューブ長が約570mm、ヘッド角73°に、前方プラス8°傾斜のハンドルポストです。


さらにこんどは、身長180cmの人を基準にして比べてみましょう。ESCAPE R3はMサイズ500mm(対象身長170~185cm)です。

比較するルートのセッティングも180cm用に変更します。
身長180cm×45%(日本人平均股下%)=81.0cm
股下81.0cm×0.88(標準サドル高係数)=71.3cm
この71.3cmは、BB中心からサドル上面までの距離です。実際に私のルートを使ってセッティングを再現したうえで、レタッチソフトで公式画像のルートに同様の変更を加えました。



ESCAPE R3(M)とDAHON Routeを重ねた画像です。こちらもサドルからハンドルまでの距離はほぼ同じになりました。ハンドルのバックスイープぶん違うという感じでしょうか。ルートはシートポスト角とハンドルポスト角が逆ハの字の関係で、上に伸びるにつれて相対的に開いていくので、180cmの人でもそれなりのコックピット長が確保されています。

フレームリーチで見ると……

ならば、いまクロスバイクに乗っている人が、明日DAHON Routeに乗り換えても違和感がないかといえば、おそらくそう都合よくはいきません。

ホイール径の違いからくる操舵感の差異など、ステアリングに関することはとりあえず置くとして、何よりも違うのはクランク(BB)の位置でしょう。ルートに乗り換えた途端、「足が妙に前だな」と感じるハズです。



あらためて比較画像を見てみると、見かけ上のシートチューブ角は大きく違わないにもかかわらず、ルートのボトムブラケット(クランク軸)位置は、ESCAPE R3と比較してかなり前方にあることがわかります。



ルートを含むダホンの大半のモデルでは、BBハンガーはシートチューブより前方にオフセットする形で存在しています。よって、実効シートチューブ角(赤線)は、見かけ上のシートチューブ角(緑線)よりも寝ているのです。(赤線で示す角度はサドルの高低によっても変化する)

ESCAPEなどのクロスバイクと、DAHON Route、2台を立て続けに乗ったとき、漕ぎ出してまず最初に感じるのはこの部分の違和感でしょう。



こうしたジオメトリー上の違いをいくらかでも解消するには、ルートのサドルを前方に出すほかありません。セットバックのないシートポストに交換し、(別体式ヤグラならヤグラを前後逆にしても可)サドルをできるかぎり前に出して固定することで、ようやくBBとサドルの位置関係がクロスバイク並みになります。

しかしこうすると今度は、ハンドルの位置がかなり身体に近づいてしまいます。



つまり、ルートのTT長は確かに570mm程度あるけれども、BB直上を基準点とした「フレームリーチ」で見ると、570という数字から受けるほどの大きさはないということですね。クランクとサドルの位置関係を考慮してポジションを見直せば、「ハンドルが近い」と感じるのも当然かもしれません。

ルートのサイズ感

で結局、ルートは小さいの?どうなの?ということなんですけれども、ルートをどのようなスタイルで乗りこなすかによって、サイズに対する印象も違ってきそうです。

ハンドルポストを適度に伸ばして上体を起こし、アップライトな姿勢でラクに走るのであれば、ルートは十分なサイズを持っていると言えます。乗り手の身長が180cm以上ともなれば少々厳しいでしょうが、それ以下なら、コックピット長という部分に関しては不足を感じることはないでしょう。

一方、ルートをスポーティーに乗りこなそうとした場合、ノーマルのままでは少し窮屈なことになるかもしれません。サドルに対するクランク(BB)の位置も不満のタネでしょう。セットバックのないシートポストを使ってサドルを前に置き、クランクとの位置関係を修正したうえで、ハンドルポジションチェンジャー等のステムを追加して、十分なコックピット長を確保する必要に迫られるでしょう。

じつは私もこの改造を検討しているところです。といってもアグレッシブな走りを考えているわけではなく、ハンドルを前方に出すことによるもうひとつの効果、ふらつくステアリングの改善に期待しているからであります。

DAHON Routeという自転車が想定する乗り方と、ターゲットにしているユーザー層から考えても、上体を起こしてラクに走るのがルート本来の姿であり、その乗り方を実践する限りにおいては、「ルートのコックピット長は必要にして十分」と言ってよいのだろうと思います。

10 件のコメント :

  1. ぽんたさん、こんばんは。
    今回の記事も大変参考になりました。

    私は身長178cmですが、やはりクロスバイクのようにルートを乗ろうとするとポジションが窮屈だったので、35mmハンドルポジションチェンジャー→60mmステムを利用した「なんちゃってアヘッド化」→ブルホーン化へとステップアップ(笑)しました。

    現在の仕様は22.2mmのブルホーンにTEKTRO RL740、シフトはSHIMANO SL-R400で、ハンドルのお辞儀防止のためにハンドルクランプからハンドルまでイモネジを貫通させ、ストッパーにしております。

    ハンドルのフラつきはいずれの方法でも多少の改善は期待できると思いますよ。

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    1. ガンマさん、こんばんは!
      すでにハンドルポジションチェンジャーをお使いでしたか!しかもブルホーン化、さらにお辞儀対策まで完了済みとは、やりますね(笑)
      ステアリングのフラつきに関しては、Yeah号のなんちゃってアヘッド化でその効果を体感済みなのですが、ルート号では折りたたみも考慮しつつどうにか工夫してみようと思っています。

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  2. ぽんたさん、返信どうもです。
    フラつき対策はYeah号でご経験済みでしたね、記事再確認いたしました。

    折りたたみを考慮されるのであれば、ハンドルポジションチェンジャーが有効かと思います。

    私は少し面倒ですがハンドルクランプからハンドルを外し、折りたたんだフレームとフレームの間に引っ掛けております(笑)

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    1. ガンマさん、こんばんは!

      >折りたたみを考慮されるのであれば、ハンドルポジションチェンジャーが有効
      いろいろググってみるとやはりそれが良いようですね。
      クイックとの干渉という問題が残るようですが、いろいろ工夫してやってみようと思います。
      あれこれ考えているときが一番楽しいですね(笑)

      >ハンドルクランプからハンドルを外し、折りたたんだフレームとフレームの間に引っ掛けて
      何気にこの種の方法が最適解かもしれませんよ。
      ルート標準のテレスコポストの場合でも、上の部分をスポッと抜いて、フレームを折りたたんだ後、隙間に差し込んでおくという方法が使えることに気づきました。
      これなら例えばドロハンを取り付けたとしても折りたためますからね。
      工夫次第でいろいろ出来るもんですね。

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  3. こんばんは、ぽんたさん

    お恥ずかしながら、つい最近まで、靴や服にサイズがあるように自転車にもサイズが存在するということを知りませんでした・・・。

    というのも、自転車に興味が無かった頃は、自転車というものはホームセンター等で買う乗り物という感覚でしたので、タイヤのサイズ(インチ)の違いは当然ながら知っておりましたが、そのようなお店で販売されているほとんどの自転車はワンサイズが相場ですので、そのせいでサイズという概念が全くありませんでした。靴を足に合わせるのではなく、足を靴に合わせるような感覚です。

    しかしながら、このように図解入りで理論的な解説を拝見いたしますと、サイズの重要性を今さらながら認識せざるを得ませんでした。

    BBの位置がやや前方にあるとのことですが、大袈裟に言うと、へっぴり腰でペダルを漕いでいる状態ということになろうかと思われますが、これは折り畳み時のハンドルポストの位置関係から仕方がないことなのでしょうね、折り畳み方式を変えない限りは。

    余計なことかもしれませんが、ぽんたさんは自転車のスキルの高さもさることながら、ウエブ制作のスキルも相当なものだとお見受けいたしました。

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    1. 座敷犬さん、こんばんは!
      そうですよねー、私も自転車に興味を持つ以前は、自転車のフレームに複数のサイズがあるなんて思いもしませんでした。スポーツサイクルの世界では5mm刻みでフレームを用意しているメーカーもあるほど、自分の身体やライディングポジションに合う自転車を選択することが重要視されています。すごいですよね。完全オーダーメイドのフレームに乗っている人も珍しくないですし、そういう意味では、まさしく靴や服に近い存在なのかもしれませんね。

      ダホンのような折りたたみ自転車でクランクが前にあるのは、シートポストを下まで下げて、折りたたみ時の脚にするためですね。一般的な自転車のようにシートチューブの延長線上にBBがあるとシートポストを貫通させて脚として使うことができなくなります。折りたたみ車でもKHSなどは、BBがシートチューブと同一線上にあります。その代わり、折りたたみ時の脚になるパーツが別途取り付けられています。

      クランクが前にあるということ自体は特に珍しいわけでもありませんで、あえて狙ってそのように作られている自転車もあります。ラクに走ろうという目的の自転車に多く見られます。クランクフォワードバイクというジャンルもあるぐらいです。ラクに走れるのならルートにとっても好都合なのではという気もしますが、ルートの場合、クランクがただ前にあるだけで、ほかの部分はそれ用に作られているわけではないので、少々バランスが悪くなっています。本来ならもう少しリアセンター長を伸ばすべきだと思うのですが、それでは折りたたみサイズ等に影響が出てしまうため無理なのでしょうね。

      WEB制作に関しては、見よう見まねでやっているだけですので、大したものじゃありません。とくにスマホでこのブログを見ると結構見づらいと分かっているのですが、最適化する知識がありません(笑)。画像をいじるのだけはいくらか得意なのですが、ほかはからっきしですね。

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  4. 解説ありがとうございます。

    ハンドルポストではなくシートポストでしたね。

    思い返してみれば、ヤフオクでもクロスやロード等のカテゴリにおいてはサイズ別にカテゴライズされています。ダホンの折りたたみ自転車を購入するに際して、このことはあまり深く考えずにおりました。

    もともと自転車を趣味としておらず、たまたま店頭で見掛けたミニベロのデザイン等が気に入り購入を決めた人の多くは、購入したミニベロが自身の体型にフィットしておれば「ミニベロって楽しいね」となって興味が深まるのでしょうが、フィットしない人からすれば「ママチャリのほうが運転しやすいよね」となってしまい、そうなれば急速に興味も薄れてしまうのではないかと想像いたします。購入後、それほど時間が経過していないのにも関わらず売却されている自転車の中には、こういう理由によって売却されている物も存在するのではないかと思います。

    知識があれば、問題点を解決するための方策が次々と頭の中に浮かんで来るのでしょうが、そうでないビギナーは現状に満足するか諦めるかのどちらかしか策は無いように思います。

    そういうことを考えると、こちらのサイトのように「なぜなのか?」を詳細に解説し、更には解決案も明示して頂いているサイトは非常にありがたい存在です。

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    1. 当ブログは大した内容のものではありません、いやホントに。
      さておき、折りたたみ小径車に関しては、確かに買っても早々に手放したり、乗らなくなってしまうパターンが多いようですね。反対に、熱狂的なファンが多いのも小径車ですし、うまくマッチングすれば、それこそ底なしの深みへとハマっていく可能性(危険性?)もあります(笑)。そう考えると最初の1台、最初にどんな小径車と出会うかというのは重要なポイントになりそうですね。

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  5. ダホンを乗るといつも膝が痛くなり悩んでましたbbの位置が問題なのはわかっていましたがすっきりしました ありがとうどざいました

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    1. 芳賀茂彦さん、こんにちは!
      至らない記事ですが、少しでも参考にしていただければ幸いでございます。ルートに限らず、折りたたみ自転車はまず「折りたためること」が第一なので、いろいろと変則的な造りが多いですよね。

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