ルートのフロントダブル化は可能か? その2 【実際編】


ルート号フロントダブル化の可能性を考えてみた前回。やはり「やってみなければわからない」ということで、FD台座など各種パーツを用意して実際に試してみました。

長くなりそうなので結論から先に書くと、ルート(2013)のフロントダブル化は可能です! たぶん。そして、私には無理でした。

用意したパーツが大失敗

フロントダブル化を実践すべく、新たに購入したFD台座とフロントディレイラー。まずこのチョイスが失敗でした。



ダホンのシートチューブ径は特殊なので、クランプ式のFD台座にも専用のものが必要になります。現在流通しているダホン用FD台座は、対応径40mm~41mmのものがほとんど。ところが、台湾から個人輸入で購入したFD台座が、なんと39mm~40mm径対応の鉄フレーム用でした。商品ページに記載されていた対応モデルの中にアルミフレームの車種もあったので、シートチューブクランプ径41mmのルートも当然行けるだろうと踏んだのですが……。

しかしまあ、これはさほど大きな問題ではありません。強引に取り付ければ使えないこともない感じです。その前にまずは位置関係の確認を、ということで、台座にFDを固定してシートチューブにあてがってみると……。

あれ?やっぱりFDのアームが補強材に当たりそうです。おかしいな、ECO3の画像では問題なさそうだったのに。と、FDを眺めてみて気づきました。このフロントディレイラ―、FD-R440ですが、なんとなくアームが長くない?と。



そのとおりでした。他のフロントディレイラ―(FD-6600)と比べてみても、上の画像のように違いは明らかです。



アームが微妙に長いせいで、インナーポジションの時点で補強材との隙間がすでにギリギリ。アウターではワイヤーに引かれたアームが内側に動くので、さらに広いクリアランスが必要になります。

ならば内側への干渉が少ないFDを使えばいいじゃないかって? これがそうもいきません。使用予定のフロントシフターはリアとセットで買ったSL-R441。これに対応するFDはFD-R440だけなのです。(引き量が異なるため)

フロントダブル化にあたってクリアすべきこと

パーツのサイズや規格面での不都合により、しっかりとした検証ができなくなってしまいましたが、確認できる部分だけでもやっておこうということで、あれこれ試してみた結果、いくつかのことがわかりました。

1. FD台座は41mm径対応のものを購入する
ルートのシートチューブ外径は41mm。FD台座もそれに適合するものが必要になります。

2. FDをなるべく内側に寄せられる台座がよい
内側方向へのストローク調整範囲に制限が生じると、チェーンラインにも影響が出てきます。



今回購入したFD台座は、この点よく工夫されており、段加工による逃げのスペースが設けられていて、羽を可能な限り内側に寄せられる造りになっていました。

3. 動作時に内側への干渉が少ないFDを選ぶ
これについてはFD-R440が少々特殊であるとも言えるので、普通のダブル用FDなら問題ないでしょう。(FD-4700、FD-R3000等のロングアーム型はビミョーかも?)

4. チェーンラインはどうしても外に出てしまう
径の合わないFD台座とアームの長いFDを使った検証なので、断言できませんが、フロントダブル化に成功したとしても、どうやらチェーンラインは外寄りになってしまう模様です。インナーの状態で可能な限り内側に寄せて仮固定してみると、フロントシングルのときの適正チェーンラインと比較して、ギア1.5枚分ほど外の位置まで詰めるのが精いっぱいでした。 インナーリングですらそれなので、アウターリングは当然さらに外側になります。

5. クランク・BBはチェーンラインを調整しやすいものを
前出4の関係で、ルートのフロントダブル化に際しては、チェーンラインを調整しやすい四角軸タイプのクランク・BBが向いています。ツーピースタイプでも不可能ではないももの、構造上、チェーンラインの調整は不得手です。どうしても、ということならトリプル用を使う手もありそうです。

6. アウター受けを自作する必要がある、かも
現行ダホン用FD台座の多くにはアウター受けがあります。しかしルートの場合、取り付け位置(高さ)次第では、シフトワイヤーがフレーム補強材と干渉する可能性あり。



今回使ったダホン用FD台座でも、クランプ位置を補強材ギリギリまで上げると、アウターポジションのときにワイヤーが当たってしまうため、位置を少し下げざるをえませんでした。



回避するには、アウター受けが外寄りにある台座を選ぶか、もしくはワイヤーが干渉しない程度に台座を下げて使う、すなわちアウターチェーンリングの歯数を小さくする、あるいはアウター受けそのものを自作する、などが考えられます。ただし今回の場合は、ルートのダブル化には不向きのFD-R440を使ったために不都合が生じた可能性があり、他のFDなら問題は最小限で済むかもしれません。

7. アウターリングの歯数は最大でも53T程度まで
前出の6のように、フレーム補強材との兼ね合いから、取り付けできるFDの位置(高さ)にもおのずと限界があり、52T~53Tあたりが可動上限になるものと思われます。

8. アウターケーシングの取り回しに工夫を
RDに伸びるアウターがちょうどFD台座上を横切る形なので、干渉しないようルーティングを工夫する必要がありそうです。もちろんFD用のアウターも新たに引かなくてはいけません。

フロントダブル化を断念した最大の理由

結局、ダブル化は可能であるという結論には達したものの、実際にはフロントダブル化を断念してしまいました。

ダブル化を仕上げる技術と知識が不足していたこと。新たに用意したパーツや現在使用しているパーツがルートのフロントダブル化にはことごとく不向きだったこと、などが理由として挙げられます。

しかしこれらのことは、新たにパーツを買い直すなり、小径車カスタムを得意とする自転車店に頼むなりすれば、解決できなくもないハナシ。(費用はかさみますが)

フロントダブル化を断念した最大の理由は、どうにか無事にダブル化を果たしたとしても、その結果、使い勝手が悪化するという未来が見えたからであります。

いちばんの懸念材料はやはりチェーンラインです。台湾ECO3の改造例を見る限り、動作に支障が出るほどチェーンラインが外に出てしまうことはないようですが、それでもかなり外寄りになるのは確実。

さらに私のルート改の場合、<130mmハブの左軸間座を交換して126mmにしている都合上、スプロケが通常よりわずかに左側に寄っています。今回の試みにおいては、これもマイナス要素のひとつでした。

2015年モデル以降のルートであれば、リアのエンド幅が130mmに刷新されているので前年までのモデルと比べ、いくらかマシかもしれません。

まとめ

長々と書きましたが、要約すれば、技術もカネもないばかりか結果にも期待できない、ということから断念するに至ったわけであります。

台湾ECO3の改造例からも分かるとおり、ルート(2013)のフロントダブル化そのものは可能である、という感触は得ました。いくつかの条件をクリアする必要はあるものの、技術のある人やショップの手にかかれば、けっこうあっさりと解決するのではないかと思います。

とりわけ2015年モデル以降のルートをお持ちの方なら、フロントダブル化に挑戦してみる価値はありそうです。

追記:DAHONルート2015年モデルから、 アウターケーブルガイドの位置が変更になり、 シートチューブにガイドが設けられるようになりました。 この新設のケーブルガイドが大きな障害となり、 フロントダブル化はかなり困難になってしまうようです。 2015年以降のモデルで実際に試したわけではないのですが、 見た限りではかなり厳しいように思えます。(不可能かも?) ガイドを削り落とすなどの加工なしに、2015年以降のルートで ダブル化に成功された方がいましたら、ぜひご一報ください。 (ガンマさん、ガイドの追加情報ありがとうございます)

10 件のコメント :

  1. ぽんたさん、こんにちは。
    Routeのフロントをダブル化するため、記事を参考にさせていただきました。
    ありがとうございました。

    以下のパーツを使用しております。

    ・ベース:Route 2012年モデル(MF-HG37で7速化) 
    ・フロントディレーラー台座:ヤフオクで2000円で落札(出品者:yuriko○○さん)
    FD取付穴の大きさが足りず、棒ヤスリで縦方向に広げる必要がありました。
    ・シフター:shimano SL-M310(3速用の1-2速部分を使用)
    ・フロントディレーラー:shimano FD-2300 直付      
    ・クランク:shimano FC-2300(53T-39T)
    ・ボトムブラケット:shimano UN26 117.5mm

    参考にされる方は自己責任で・・・(^_^;)

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    1. ガンマさん、こんばんは!
      ルートのフロントダブル化おめでとうございます!
      やはり可能だったのですね!
      パーツ類の詳細もありがとうございます。
      参考になります。ネットで検索しても、
      実際にルートを前2枚で運用しているオーナーさんは見かけないので、
      たいへん貴重な成功例と言えるのではないかと思います。
      このコメントをご覧のルート乗りのみなさんも、
      ぜひチャレンジしてみてください。
      もちろん、安全は最優先でお願いします。

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    3. ぽんたさん、こんばんは。
      私の方こそ沢山の情報と勇気をいただきました(笑)

      >補足&修正
      ・チェーンラインはノーマルホイールで7速化した状態で、アウターがリア6速、インナーがリア4~5速の辺りになります(私はアウター6速を常用)。

      ・クランクのギア数ですが、53Tではなく52Tでした。

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    4. フムフム、なるほど。
      やはりチェーンラインは外寄りになるのですね。
      小径車の場合はトップ寄りのギアで走ることが多いので、
      外に出るぶんには、
      さほど神経質にならなくともよいのかもしれませんね。

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    5. フロントトリプル化にトライ。半ば成功、半ば失敗。

      重い荷物を搭載する長距離ツーリングにとって、Routeデフォルトクランク52Tは、辛いものがある。フロントトリプル化への改造が急務。
      BBはRouteデフォルトのまま残し、クランクをALTUS FC-M311 42-32-22Tに交換。7速ボスフリーMF-TZ31-14-34Tとのチェインラインを確かめる。42T-18T,32T-20T,22T-22Tで真っ直ぐ、両端14-16T,24-34Tはやや斜交いで、文句なし。
      常用は42T。荷物搭載の急坂では、32-22Tに手でチェインを架け替えるほかなく、不便は否めなかった。
      このたび、トリプル化を試みての結果は、半ば成功、半ば失敗。

      前段トリプルディレーラーは、バンドタイプACERA FD-M360、ALTUS FD-M310、TOURNEY FD-TX51などの類似MTB用を改造。FD-TX51の34mmバンドを41mmシートポストに嵌め合せるよう押し広げる。バンドを万力に固定し、大工金槌で軽く叩いて、現物あわせで寸法に加工するのがミソ。30分もあれば充分。改造品は、シートポストに取り付け、長めのビスで締め付け完成。
      チェインを22Tにかけ、後段を14-34Tにシフトし、チェインとガイドフレームの通りをテスト、辛うじてパス。

      上引きシフトワイヤのアウター受けは、ママチャリのアウター受けを転用。リアキャリアラック支持ブラケット部に、完璧な固定位置を見出せる。

      シフターは、サムシフターSL-TX30-LNが最適。引き代が10段階に微調節できる優れもので、チェインとガイドフレームとの、摺れ、きしみ、が消える。

      走行テストの結果は、半ば成功、半ば失敗。
      42T-32Tはスムースに変速する。が、32T-22Tに問題が残った。22Tから32Tへのシフトアップは容易だが、32Tから22Tにシフトダウンが不能。チェーンを内向けに棒で押す、助太刀がいる。Routeシートポストが、他車34mmにくらべ41mmと、わずかに太いことが災いして、チェーンガイドの内向きストロークが足りないのだ。
      解決策は、BB右軸長の5mm程度の拡大にあるが、RouteBBのクセ、右ワン固着の難所が越せず、やむなく放置。あわせて、チェインラインの悪化も無視できない。
      めったに22Tに落とすこともない、まあいいか!!

      2速用SD 2300の実物を手元において操作しながら思った。似た形状で、トリプル上引きタイプを入手したい、と。


      改造部品、価格
      FRONT
      Crank :ALTUS FC-M311 42-32-22T \3,410
      FD   :TOURNEY FD-TX51 要改造 \1,351
      SL :SL-TX30-LN  10s \ 672
      SubTTL : \5,433
      REAR
      CS :MF-TZ31 7s 14-34T \1,128
      SL :SL-TX30-R7 7s \ 610
      SubTTL : \1,738

      ALLTTL : \7,171

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    6. 匿名さん、こんにちは!
      ルートのフロント多段化おめでとうございます!
      工作の詳細もありがとうございます。
      フロントトリプルとはスゴイですね!
      せっかくのフロント3枚ルート号ですので、
      ネット上で写真を添えて公開されてはいかがでしょうか。
      たいへん有益な情報になるのではないかと思います!

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    7. Dahon Routeトリプル化は意外な方法で仕上がった。デフォルトBBから、ママチャリ・スピンドルと差し替えるだけの、簡単平易な作業ですんだ。


      Dahon Route・デフォルトBBから、左ワンを緩め、短尺のスピンドルを抜き取ったあと、長尺のママチャリ・スピンドルを移設する。右ワンを外す必要はない(外せない)。クランク・ホイールをギア1枚程度外向きに移動した結果、フロント・ディレーラーの動きが、見違えるほど改善した。

      締めに、おまじない。シフターSL-TX30-LN の、ハンドルバー固定バンド・プラスネジ(5mm径10mm長)を、ドリンク・ホルダーのヘックス・ネジと、スゲ替えるべし。これを、強力に締め上げて、臥竜点晴とする。(シマノにして、ネジ一本、詰めが甘かった!)

      白状すると、この簡単平易な解決策に到るまでには、思わぬ苦難が待ち受けていた。


      Dahon Route・デフォルトBBでは、トリプル化は成功しない。トリプル・ディレーラーを正常に機能させるには、BBを交換し、クランク・ホイールをすこし外側に移動する必要がある。

      何の迷いもなく、カートリッジBBを購入。SHIMANO BB-UN26 127.5mm(D-EL) 68BSA ¥1,100 Amazonプライム。スピンドルの長さは、Dahon Route BBのデフォルトより、10mm以上長い。

      SHIMANO BB-UN26 は、シェルに固定するカップがプラスチック製。スピンドルの長さによって、刻印で識別できる。
      MM 107mm and 110.5mm
      LL 113mm
      D-H 115mm
      YL 116mm
      XL 118mm
      ZL 121mm
      NL 122.5mm
      EL 127.5mm

      このカートリッジBBの英名は、SQUARE-TAPER-SPINDLE CARTRIDGE-BEARING BOTTOM-BRACKET。

      Dahon,RouteデフォルトのBBの左ワンは、ドライバーとハンマーで軽く叩くと、容易に緩んだ。だが、その右ワンは、評判にたがわず、頑固に固着して緩まない。バイスで強力に固定するという、スゴワザをもってしても、やっぱりダメ! 

      無理して、シェルを割ってしまっては、元も子もない。かくして、BB-UN26 127.5mm(D-EL)は、その行き場を失った。

      ガラクタ箱から、ママチャリのカップ&コーンBBを発掘した。スピンドルの長さがBB-UN26 127.5mm(D-EL)とほぼ同じだ。往年の日本製部品の加工精度の高さには、驚嘆するほかない。このママチャリBBが、Dahon Routeトリプル化の切り札なったことは、冒頭に記したとおり。

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    8. 匿名さん、こんばんは。
      詳細な工作過程ありがとうございます!
      参考になります。

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    9. 匿名さん、こんばんは。
      Dahon routeのトリプル化、参考になります。
      右ワンは残念でしたが、無事に解決されて何よりです。

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