転倒、ケガ、その後。(3)費用と保険、病院選び編


前回までの記事では、手術やリハビリなど、治療の過程で実際に体験したことをお伝えしました。今回はその治療にかかった費用や医療保険、そして手のケガゆえの病院選びなどについて、感じたことなどを書いてみようと思います。

治療費はどのぐらい?

母指CM関節靭帯断裂を治療するために病院の会計窓口で支払った費用の総額は、およそ12万9000円でした。(3割負担)

このうち手術当日の会計が約9万7000円。これがいわゆる「手術代」に相当します。残りの3万2000円は、通常の診察日やリハビリで通院した際に支払った代金です。保険会社に提出する診断書の文書料なども含まれます。このほか交通費が計2万円ほどかかっています。

今回と同様の手術でも、病院や医師の方針次第では、数日の入院や全身麻酔などの処置を伴うこともあり、その場合にはもう少し大きい負担になるかもしれません。

民間の医療保険を使う

ケガの治療に必要なのだから仕方がないとはいえ、やはり予期せぬ出費はラクではありません。そんなときに役に立つのが民間の医療保険です。幸いなことに私も某生保のプランに加入しております。

ところで、一般的な医療保険(生命保険)契約における手術給付金の支払い条件として、次のような文言が添えられているのをご存知でしょうか?

「ただし手指・足指の手術は除く」

あったんですね、こんな免責事項が。知りませんでした。ほとんどの医療保険で同様の免責があるようです。(スポーツ保険等の傷害保険はまた違います)

手指の手術は除く? ホントかよ!とさらに調べてみると、手の手術がすべて対象外というわけではないらしい。手術給付金が支払われるか否かは、手術部位がMP関節より末梢か中枢かで決まるとのこと。中枢側であれば給付の対象になります。



今回手術を受けるCM関節はMP関節より中枢側にあり、どうやら給付の対象になりそうだということで、ひとまずは安堵しました。日帰り手術という点もとくに問題ないようです。しかし、果たしてどれほどの金額が支払われるのか?

こうなったら電話で問い合わせるしかありません(最初からそうしろという話ですが)。保険会社のカスタマーサービスに連絡してみたところ、術式Kコードなるものを医師に聞いて欲しい、それが分かれば、給付の対象になるか否かも含め、給付額を教えることができる、と言うのです。

この術式Kコードというのは、診療報酬点数表にある手術・処置に割り振られた記号で、保険会社がこのコードを見れば、どのような手術や処置が行われたのか分かる仕組みです。 これをもとに給付の可否や給付額が決まります。

このコードについて病院に聞いてみると、「手術を終えてからでないとわからない」との返事。仕方ないので保険の話はとりあえず保留にしておき、まずは目前に迫った手術に備えることにしました。

手術後、正確には手術当日の窓口会計の際に、事務員の方が術式Kコードを教えてくれました。
  • K079 靭帯断裂形成手術
  • K059 骨移植術
この2つが今回の手術コードだそうです。

後日、あらためて生保のカスタマーサービスに連絡。術式コードと手術部位を伝えたところ、間違いなく手術給付金の対象となる手術であり、靭帯断裂形成手術については10万円、骨移植術については20万円給付金が出るとのこと。これは合計30万円という意味ではなく、高いほうのみが適用されるルールだそうです。つまり申請すれば20万円が給付されることになります。

いいところ5万、多くても10万かと考えていたので、20万円という金額はちょっとびっくりしました。保険には入っておくものですね。(金額は保険会社や契約内容によって異なります)

その後、専用の入院・手術等証明書(診断書)を医師に書いてもらい(文書料5400円!)保険会社に送付。1週間後には20万円が振り込まれ一件落着となりました。

蛇足ですが、私が契約している保険商品は、10年更新の死亡保険を主契約として、手術や入院を特約でカバーするというタイプのもの。この契約がもうじき満期を迎えるタイミングでした。

こうした保険プランの特徴のひとつに、契約期間中に一度も保険の請求をしなかった場合、無事故給付金という形でいくばくかのお金が戻ってくる、というものがあります。 偶然にも今回その金額が20万円なのです。

当初、手術給付金を請求したところでせいぜい10万、しかもその請求をしたことにより、無事故給付金20万のほうの受給資格がなくなるのでは、請求を見送ったほうが得策ではないか?と考えました。しかしのちに手術給付金も同額の20万とわかり、どちらにしても金銭的には同じかと納得するに至りました。

ところがです。カスタマーセンターに問い合わせた際に、念のため「手術給付金を請求したら、無事故給付金はナシですよね?」と聞いたところ、「大丈夫ですよ」と言うではないですか。 いったいどういうこと?

電話の向こうの話によれば、(よくわからなかったのですが)主契約ではなく特約(手術特約)からの請求なら無事故給付金には影響しない、ということ?のようです。これは契約内容にもよるらしいので、私のケースでは影響がなかったということなのでしょう。(日帰り手術だったことも関係しているのかも?) なんにせよ、これはたいへん助かりました。こうして迷うことなく手術給付金を申請したのであります。

高額療養費制度

1か月の間に、ある一定の額を超える医療費がかかったとき、その超過分を支給しますよ、というのがこの高額療養費制度です。基準となる限度額は収入や年齢に応じて決められており、例えば70歳未満で一般的な収入がある人の場合、1か月の自己負担限度額80100円と設定されています。
(記事執筆時)

 *追記
 平成27年から70歳未満の限度額が5区分に変わりました。それに伴い各区分の具体的な限度額も変更されています。くわしくは各種WEBサイトなどをご覧ください。

医療費の合算にはいくつかのルールが定められており、同一月内の同一医療機関に限るとか、入院と外来は分けるなど、けっこう細かな条件があるようです。詳しくは厚労省やお住まいの自治体のHPでご確認ください。Wikipediaでもわかりやすくまとめられています。

今回の私の場合は、手術を受けた月のみ、この自己負担限度額を超える医療費がかかっています。そこでさっそく申請してみました。レシート類など必要なものを揃えて役所の担当課に行き、申請書類に記入。申請した内容に不備がなければ、審査を経て、4か月程度で指定の口座に入金されるそうです。(追記:窓口申請から約1か月で入金がありました)

この制度を利用する際に気を付けたいのは、医療費の合算が同一月内に限られるという部分でしょう。高額な診療はなるべく同一月内に収まるようスケジュールを調整したほうがお得です。

手のケガと病院選び

どのようなケガや病気であっても、満足いく治療を受けるための病院選びは難しいもの。巷の評判を必ずしも鵜呑みにはできず、悩むところです。しかし、こと「手の治療」に関しては、判断材料になるいくつかのポイントがあります。

もっとも重視したいのは、手外科専門医の診察と治療を受けられること。この点です。繊細で多機能な「手」を治療するのは簡単なことではなく、高い技術と豊かな経験が求められる分野です。

手術は技術と経験です。手外科領域の手術を数多くこなしている、経験豊かで実績のある専門医にまかせることをオススメします。

各地の手外科専門医は、日本手外科学会のWEBサイトにある手外科専門医名簿で見ることができます。そのうえで、説明の丁寧さや病院の雰囲気など、実際に診察を受けた印象から判断すると良いと思います。

くわえてもうひとつ。専門医による診療と同様に重要なのが、術後のリハビリプランがいかに充実しているかという点です。整形外科の場合、手術を終えただけでは道半ば。むしろそこから始まる長く地道なリハビリこそが本番、と言っても過言ではないのです。

とりわけ手の治療では、リハビリを行う作業療法士にも、手に関する専門知識と経験が求められます。手外科を標榜するクリニックや整形外科であれば、術後のリハビリ行程にもそれなりの用意があるでしょうが、選択の余地があるのなら、リハビリ科の充実度という点から病院を選ぶのも良いかもしれません。

情報収集とお役立ちWEBサイト

母指CM関節の手術が決まってからというもの、なにかもっと身近で具体的な情報はないかと、インターネットを使ってあちこち探しまわりました。医師による医学的な解説ではなく、 治療を受けた患者のナマの声を聞きたかったのです。

ところが、とくに珍しい手術ではないにも関わらず、手術を受けた当人の体験談や予後の話などは、ほとんど見つけることができませんでした。(とりわけ日本語のサイトでは)

そういったワケもあり、普段は自転車のことを書いているこのブログを使って、3回にわたり、治療の過程で知り得たこと、感じたことなどをまとめてみました。不十分な内容ですが、少しでも参考になれば幸いです。

以下に、情報収集に使ったWEBサイトや、参考になったページなどをいくつかリストアップしました。よろしければご活用ください。

総合情報

母指CM関節関連情報

参考
surgery……手術
thumb cm(cmc) joint……母指CM関節
thumb basal joint……母指基関節(母指CM関節と同義)
arthroplasty……関節形成
tendon……腱
ligament reconstruction……靭帯再建
osteoarthritis……骨関節症
LRTI……CM関節症に対する手術方法のひとつ
post-op……ポストオペ、術後
rehab……リハ、リハビリテーション

転倒、ケガ、その後。(1)手術編(最初の記事)
転倒、ケガ、その後。(2)リハビリ編(前の記事)
転倒、ケガ、その後。(3)費用と保険、病院選び編(この記事)

6 件のコメント :

  1. キングジョー2014年9月30日 14:47

    ぽんた様
    ブログを拝読させていただきました。
    自分も最近自転車に乗るようになり、自分でいじる楽しみも見つけたので、よそ見運転や、パーツの組手不具合等でのケガには気を付けたいと思います。

    さて、このブログにたどり着いたのも2013年5月4日の記事「DAHON Route カスタマイズ #04 74mm幅フロントハブの調達」をグーグルで見つけたからです。
    最終的に台湾の無名のフロントハブをご購入されたとのことですが、どのように発注されたのでしょうか。
    近所の自転車屋に頼んでも入れてくれるとは思えないので是非とも教えてください。
    私はDahonに乗っているわけではありませんが、フロントのフォーク幅が80㎜程度しかないのでどうしても安くハブを手に入れたいんです。

    ご教授願います。

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    1. キングジョーさん、こんばんは!
      ご訪問ありがとうございます!

      74mm幅のフロントハブですが、
      私は台湾の「露天」というサイトで商品を見つけ、
      それを輸入代行業者経由で購入しました。

      しかし現時点であれば、ヤフオークションから入手するのが
      いちばん簡単かつ安価なのではないかと思います。
      ヤフオクのカテゴリ「自転車」からサブカテゴリ「ハブ」に行き、
      検索ワード「74mm」で探せば新品がいくつか出てきます。

      私が購入を検討していた当時、
      ヤフオクには74mm幅のハブがひとつも出品されていませんでした。
      そのため、やむを得ずコストのかかる輸入代行に頼りましたが、
      現在のような状況なら私もヤフオクで入手したはずです。
      代行を使って台湾から個人的に輸入するよりも安く済みます。
      あとは出品者をうまく選ぶことでしょうか。

      なお80mm幅程度のフォークに使う予定とのことですが、
      くれぐれも無茶な整備・改造にならぬようお気をつけください。
      ケガがしてはせっかくの自転車にも乗れなくなってしまいますからね。
      安全で楽しい自転車生活をお送りください!

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  2. キングジョー2014年10月2日 22:24

    ぽんた様

    ご返答ありがとうございます。
    自分がヤフオクを見たときも出展が無かったので気長に待って見ます。
    無理のない改良・整備を行いたいと思います。

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    1. キングジョーさん、こんばんは!
      ヤフオクにはタイミングもありますよね確かに。
      気長に探すのがいちばんです。

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  3. 自分の父親が5年ほど前に左手(非利き手)を複雑骨折をし、結果として身体障害者として暮らしています。
    重症であったこともありますが、罹った医師の手術ミスが最大の問題であると多くの人が認識しています。当人はいまも生活に支障をきたしており、左手の握力は4kg程度しかありません。

    もっと早い対処をすべきだったと思いますが、ブログ主様が健康で安心しました。手外科はなり手が少ない分野なのでこういうミスが多いらしいのですが、この記事のリンクを参考に今後のリハビリ等を考えようと思います。

    話題は変わりますが、自分は最近になってRouteの2014年モデルを購入したのでここの記事は非常に参考にさせてもらいます。妙な所で共通点があったので書込させていただきました。

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    1. 匿名さん、こんばんは。
      お父上のケガ、大変なことですね。
      心中お察しします。
      重度の骨折など緊急性の高いケガの場合、
      悠長に医者を選んでいるわけにもいかず難しいところですね。
      駆け込んだ病院の医師を信じて任せるほかないわけですが、
      その執刀医の技量不足ゆえに後遺障害が残ったのでは、
      なんともやりきれない思いですね。
      私は素人なので確かなことは言えませんが、
      今からでも一度、ほかの手の専門医の診察を受けてみるとか、
      あるいは手外科に併設されたリハビリテーション科を
      訪ねてみるのも良いかもしれません。
      ご本人、ご家族ともども、くれぐれもお大事になさってください。

      そんな中にあってもルート号には、
      気分転換のひとつになってくれることを期待したいですね。
      自転車で走るって、やっぱり楽しいです。
      ぜひとも安全で愉快な小径車ライフを満喫してください!
      このブログがわずかでも参考になれば幸いです。

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