樹脂製シートポストシムを試してみた


ネットでDAHONに関する情報をあれこれ検索していると、しばしば出てくるのがこの樹脂製シートポストシムです。中国・台湾あたりのDAHON乗りにはわりとメジャーな製品のようで、あちらの小径車関連サイトを覗いてみると、樹脂製シムを使ったカスタムを数多く見かけます。



そもそも「シートポストシムとは何ぞや?」と問われれば、そのシートチューブにとって標準ではない細いポストなどを使う際に、シムを介してサイズ(径)を調整するためのもの、という認識が一般的かと思います。

しかし、DAHONの場合はこのシムが最初からフレームに仕込まれています。

シートチューブの内径がひと回り大きく出来ており、そこにシムを挿し込むことではじめて33.9径のポストが合うようになっているのです。

つまりシートチューブ全体でポストと接触しているのではなく、シムの長さのぶんだけでシートポストを支えている、ということになります。

DAHON標準仕様のシートポストシムはアルミ製。カッチリ感は十分ですがシートポストが傷みやすく、色の禿げやキズが目立つというデメリットもありました。また、上げ下げする際の感触もいまひとつで、手を離せばポストが下までストンと落ちてしまうところなどは、あまり好みではありませんでした。

この部分に関してはYeah号のほうが良くできています。DAHONライセンス車であるYeah号も、ルート同様、シムを介してシートポストを取り付けるスタイルなのですが、Yeah号はそのシムが樹脂製です。(2006年モデルの場合)

Yeah号のシートポストは上げ下げの感触がとても滑らかで、シートポストクランプのレバーをリリースしてもストンと落ちてしまうようなことがありません。それでいて抵抗が強すぎることもなく、ヌヌッと動く絶妙な手ごたえを生み出しています。

自転車の性能という面では、直接的には関係のない部分ではありますが、使うたびに展開と折りたたみを繰り返すユーザーとしては、作業時のフィーリングが良いにこしたことはありません。

シートポストのキズ防止というメリットもあることだし、ここはひとつ試してみるかということで、ヤフオク経由で購入し取り付けてみました。

が……。結果的には、目論見どおりにはいきませんでした。とりあえず交換の様子などを。



手始めにシートチューブに付いているクランプを外します。クイックレバーを抜き取ってから、クランプカラーを少し開いてやれば外れます。

しかしシムのほうは、簡単には抜き取れそうにありません。ちょうど都合よくシムの位置がずれており、そこをペンチ等で掴んで引っ張り上げてみようかとも考えたのですが、シムが傷みそうなのでここは自重します。(この判断がのちのち活きてくることに)

さてどうしたものか。考えを巡らせていると、あることに気づきました。この作業、何かに似ている……。



ピコーン! おもむろに押入れを漁ること数分。見つけました。



ヘッドワンポンチです。持ってました、こんな工具。これを使って下側から小突いてやれば抜けるのでは?



思ったとおりです。数回軽く突いてやるだけで簡単に抜き取ることができました。



さっそくここに代替品の樹脂製シムを仕込みます。このシムはABS樹脂で出来ているとのこと。かなりチープな造りで、大丈夫かなという感じですが、内側はザラザラとした表面仕上げになっており、滑り止めのことも多少は考慮されているようです。



新たなシムを取り付けて、クランプカラーを戻し、シートポストを挿し込みます。

レバーを開けた状態でシートポストを放してみると、ストン。あら? YEAH号のように保持されることはなくガッカリです。まあ仕方ありません。

今度はクランプを締めてシートポストを固定してみます。なんだか締め込む量が増えた印象です。とにかく、しばらくこの状態で使ってみることにします。



と、ここまでが新生ルート号完成直後ぐらいの話です。それから1か月半。結局、元のアルミ製シムに戻してしまいました。傷めないように取り外しておいて良かった! と思ったのはこのためです。

樹脂製シムの何が駄目だったのかといえば、まず、シートポストをしっかりと固定するために、クランプをかなりキツく締める必要があったことです。締め込む量が増えたという印象は間違いではなく、たしかにそのとおりでした。

滑り止めという点では優秀で、普通に締めてもシートポストが下がってくることはありません。そのため最初はアルミ製シムと同じ感覚で使っていました。しかしすぐに、サドルが微妙にゆらゆらすることに気づきました。

やぐら部分の固定ボルトが緩んだのかと思いました。が、実際はそうではなく、シートポスト自体が前後に揺れていたのです。

なるほど、下がらない程度に締めただけでは駄目で、もっとキツくしなければいけなかったのか。そこで揺れがなくなるまで締め込んでいくと、これがかなりの深さ、キツさになります。

私のルート号は保管スペースの都合で、通常、折りたたんだ状態で収納されており、使うたびに展開してはまた折りたたむという作業を繰り返します。

その際、シートポストクランプのレバーがぎちぎちに締め込まれ異常に固いというのは、けっこうなストレスを感じます。

さらに、クランプを深く締める必要が生じたことにより、シートチューブのスリット(割り)周辺にシワ寄せが来ており、標準アルミ製シムのときと比べると、スリット上端部の変形量がやや大きいようでした。

クランプの開け閉めを頻繁に繰り返すルートのような自転車では、これはあまり良いことではないハズです。(アルミ製フレームではクラックの入りやすい部分)

これらのことを考慮したとき、果たしてこの樹脂製シムをそこまでして使う必要があるだろうか? いや、ない。という結論に達したワケであります。

これはあくまで、ルートにBioLogicシートポスト、そして乳白色のABS樹脂製シムを組み合わせた場合であり、DAHONの他の車種やシートポスト、あるいは他の樹脂製シムでは、また違った結果になるかもしれません。(樹脂製シムにも複数種類あるようです)

とりあえず、今回の組み合わせではイマイチ、という結果に終わりました。




*追記: 樹脂製シムを再度テスト中……

一度は見切りをつけたこの樹脂製シートポストシムを、2016年春、ふたたび使い始めました。印象は以前に書いたとおりで今も変わりないのですが、シム外側にアルミテープを貼って内径を少しキツくすれば、多少良くなるのではないかと思いついて、試しにもう一度取り付けてみました。

作業前にいくつか検索したところでは、このような用途にはアルミテープは向かないようです。確かに、テープを貼ってポストを挿し込んでみると、最初の1回だけは具合が良かったものの、すぐにスカスカと動くようになってしまいました。



さらにもう1枚重ねて2重に貼ったのが上の画像です。それでも、調子がよかったのはやはり最初のほうだけで、じきにアルミテープが潰れて伸びてしまい、クランプを解放すると自重でスーッと下がるように……。

ならばと、さらに重ねてアルミテープ3重貼り。ここまでやると最初の差し込みの時点でかなりキツく、さすがにこれで常用は無理かと思いきや、上げ下げとクランプを繰り返すうちに、 ぬる~ッと動かせる程度のちょうど良い抵抗になっていました。クランプをある程度しっかり締めればグラつきもなく、スリットの変形量もずいぶんマシになりました。(樹脂製シムなら異音に対する抑制効果も期待できるかも)



これもたぶん、そのうち緩くなるのだろうとは思います。が、とりあえずこの状態で使用中です。こういった用途にはステンレステープが良いそうですよ。(けっこう高いんですよね)




*追記2: 樹脂製シム破損……

アルミテープで径を調整して使用中の樹脂製シムが、なんと破損してしまいました。いちばん上のツバ状の部分が、一周ぐるっと剥がれてしまいました。キツくしていたのが良くなかったのかもしれません。が、それ以前に、耐久性に少々問題があるようです。画像のものとは違う樹脂製シムを買い直す予定です。

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